
社内Wi-Fiが不安定な原因は?よくある8つのトラブルと対策まとめ
こんにちは、クレスコ・デジタルテクノロジーのSです。近年、モバイル端末やクラウドサービスの普及により、無線LAN(Wi-Fi)は企業の業務に欠かせないインフラとなっています。
しかし、接続が不安定、通信速度が遅いなどのトラブルが増えており、業務に支障をきたすケースも少なくありません。
本記事では、オフィスや施設でよく発生する無線LANトラブルの原因とその対策を8つに分けて解説します。
安定したWi-Fi環境を構築・維持するためのポイントをぜひご参考ください。
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目次[非表示]
SSID数が多すぎることによる干渉
企業や施設のWi-Fi環境でSSID(ネットワーク名)を複数設定している場合、無線チャネルの帯域が分散され、無線AP同士の干渉が増加します。
その結果、通信速度の低下や接続の不安定化、認証処理の遅延などのトラブルが発生しやすくなります。
特に、ゲスト用・社内用・IoT用など用途別にSSIDを分けすぎると、管理も複雑になり、端末の接続先が不明確になることでネットワーク遅延の原因にもなります。
対策ポイント:
① 不要なSSIDの削除・統合
用途が重複するSSIDを整理することで、干渉を減らし、認証処理が効率化されます。
② APの設定・配置の最適化
チャネルの重複を避け、APの配置を見直すことで、電波干渉を抑え、通信品質を改善できます。
SSIDの見直しは、Wi-Fiの通信品質改善と運用管理の効率化に直結します。まずは現状のSSID構成を棚卸しし、必要最小限の設計に再構築することが重要です。
iPhoneのプライベートWi-Fiアドレス機能による接続不具合
iOS 14以降のApple製端末では、「プライベートWi-Fiアドレス」機能が標準で有効になっており、毎回異なるMACアドレスを使用してWi-Fiに接続を行います。しかし、企業ネットワークでは、MACアドレスを用いた認証・アクセス制御・ログ管理を行っているケースが多く、この機能が原因で以下のようなトラブルが発生することがあります。
ネットワーク認証が失敗し、Wi-Fiに接続できない
VLANやACLなどのアクセス制御が意図通りに機能しない
ログ管理や端末の識別が困難になる
対策ポイント:
① 端末側で「プライベートWi-Fiアドレス」機能を無効化する手順(iPhone/iPad)
ホーム画面から「設定」アプリを開く
「Wi-Fi」をタップ
接続したいネットワーク名の右側にある「i(情報)アイコン」をタップ
「プライベートWi-Fiアドレス」をタップ
表示されたオプションから「オフ」を選択
※企業で多数のiOS端末を管理している場合は、Apple Configuratorなどを使って端末を監視モードに設定し、MDM(モバイルデバイス管理)で「プライベートWi-Fiアドレス」機能の無効化設定を一括配布することが可能です。これにより、ユーザーが勝手に設定を変更することを防ぎ、安定したネットワーク運用が実現できます。
② 証明書ベースの認証(EAP-TLS)や802.1Xへの移行
証明書認証(EAP-TLS)やユーザーアカウントベースの認証方式(802.1X)へ切り替えることで、より安全かつ安定したWi-Fi接続環境を構築できます。
これらの対策を講じることで、iOS端末特有の接続トラブルを未然に防ぎ、企業ネットワークにおける安定したWi-Fi運用を実現できます。
不適切なAPの設置方法
無線LANの通信品質が不安定な原因のひとつに、無線APの設置方法の誤りがあります。特に、本来は天井設置を前提とした無線APを壁や棚の上に設置してしまうと、アンテナの向きや放射パターンが最適化されず、電波の到達範囲や強度にムラが生じています。
指向性アンテナを搭載したAPでは、本来カバーできる範囲を十分に確保できず、通信速度の低下や接続不安定の原因となります。
対策ポイント:
① 設置角度・高さ・向きの確認
無線APの放射方向に合わせて設置することで、電波の届きやすさと安定性が向上します。
② 障害物のない開けた空間への設置
金属棚やディスプレイなどの干渉物を避けることで、電波の反射や吸収を防ぎ、通信品質を保てます。
③ サイトサーベイの実施と配置の最適化
電波の強度や干渉状況を可視化し、必要に応じてAPの追加設置や配置変更を行うことで、カバー範囲と安定性を確保できます。
正しい設置方法を守ることで、通信の安定性が大幅に向上し、ユーザーの満足度や業務効率にも直結します。設置環境に制約がある場合でも、電波の特性を理解したうえでの工夫と検証が重要です。
遠くのAPに接続し続ける問題
無線LAN環境では、ユーザーが移動しても端末が遠くの無線APに接続し続けてしまうことで、通信速度の低下や接続の不安定化が起こりやすくなります。
これは、端末が電波の弱い無線APから離れようとせず、近くの無線APに切り替わらないことが原因であり、端末側のローミング感度やしきい値設定が影響しているケースがあります。
対策ポイント:
①端末側のローミング設定を見直す
WindowsやAndroid端末では、「ローミングのしきい値」や「ローミング感度」を調整することで、電波が弱くなった際により強い電波の無線APへ切り替える挙動を促すことができます。
②端末側で不要なSSIDを削除
端末側で接続予定のないSSIDを削除し、特定のSSIDへの接続を優先設定することで、接続の安定性を高めることができます。
※上記を記載した運用ガイドの整備も効果的です。
このような現象は、オフィスや学校など広い施設内でのWi-Fiトラブルの原因としてよく見られます。この機会にぜひ見直してみてください。
DFS(Dynamic Frequency Selection)の影響
無線LANの5GHz帯では、気象・航空・軍事レーダーと同じ周波数帯を一部のチャネルが利用しています。
そのため、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能がWi-Fi機器に搭載されており、DFS対象チャネルでレーダー波を検出すると、無線APはそのチャネルの使用を即時停止し、別のチャネルへ自動的に切り替えます。
この切り替えの際、接続中の端末が一時的に切断されるため、業務に影響を及ぼすことがあります。
対策ポイント:
① DFS対象外チャネルの利用
5GHz帯のうち、W52(36〜48ch)やW53(52〜64ch)などのDFS対象外チャネルを選定することで、レーダー干渉による切断リスクを回避できます。
ただし、これらのチャネルは利用可能数が限られており、混雑しやすいため、設計時のチャネルプランニングが重要です。
② Fast DFS機能の活用(対応機種のみ)
一部の無線APでは、レーダー検出後のチャネル切り替え時間を短縮する「Fast DFS」機能が搭載されています。切断時間を最小限に抑えたい場合は、対応機種の導入と設定の確認をおすすめします。
③ Wi-Fi 6E/Wi-Fi 7への移行
6GHz帯はDFSの制約がなく、干渉も少ないため、より安定した通信が期待できます。
6Ghz帯を使用可能な最新のWi-Fi 6E/Wi-Fi 7対応の無線APを導入することで、DFSによる通信断のリスクを根本的に回避できます。
DFSによる予期せぬ通信断を防ぐためには、チャネル選定・機能設定・機器選定を含めた総合的な対策が重要です。安定した無線LAN環境の構築には、これらの見直しをぜひご検討ください。
PoE(Power over Ethernet)の電力不足
PoE(Power over Ethernet)は、LANケーブル1本で通信と電力供給を行える便利な仕組みですが、給電能力が不足すると、無線APの性能が十分に発揮されず、通信速度の低下や接続不安定などのトラブルが発生します。
特に、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7対応の高性能無線APでは、IEEE 802.3bt(PoE++)規格の高出力(最大51W)が必要な場合があり、従来のPoE(802.3af)やPoE+(802.3at)では電力が足りないケースもあります。
また、PoEスイッチには全体の電源容量の上限があるため、ポート数が多くても同時にフル出力できる台数には制限があることにも注意が必要です。
供給電力が不足している場合、USBポートやMIMOアンテナなどの高機能が制限され、AP本来の性能が発揮できなくなることもあります。
対策ポイント:
① 最大消費電力の確認と給電設計の見直し
無線APの消費電力とPoEスイッチの出力能力を照らし合わせることで、電力不足による機能制限を防ぐことができます。
② 高出力対応機器への置き換え
IEEE 802.3bt(PoE++)対応のPoEスイッチやPoEインジェクターを導入することで、最新APの高い電力要求にも安定して対応できます。
③ 未使用ポートの無効化と電力集中
使用していないPoEポートを無効化することで、必要な機器に電力を集中させ、安定した動作を確保できます。
④ LANケーブルや接続環境の確認
ケーブルの規格不一致や接触不良、アース未接続などの物理的要因も通信不安定の原因となるため、併せて確認が必要です。
PoE環境の見直しは、無線APの性能を最大限に引き出し、安定したWi-Fi運用を支える重要な要素です。電力供給の設計と物理環境の確認を含めた総合的な対策を行いましょう。
ローミングの頻発による通信の不安定化
無線LAN環境で端末が頻繁に異なる無線APへ切り替わる(ローミングを繰り返す)と、通信が一時的に途切れたり、通話やビデオ会議が中断されるなど、ユーザー体験に悪影響を与えることがあります。
この現象は、無線APの設置間隔が狭すぎる、または電波出力が強すぎて複数APの電波が重なりすぎている場合に発生しやすく、端末がどちらの無線APに接続すべきか迷ってしまうことで、不要なローミングが頻発します。
対策ポイント:
① 電波出力と設置間隔の最適化
無線APの電波出力を調整し、設置間隔を見直すことで、電波の重なりすぎを防ぎ、ローミングの頻度を抑えることができます。
② ローミング支援機能の有効化
無線AP側でIEEE 802.11k/v/rなどの機能を有効にすることで、端末に最適な接続先の情報を提供し、スムーズな切り替えを促進できます。
③ 端末側のローミング設定の調整
端末の「安定優先モード」や「ローミング感度」の設定を見直すことで、不要なローミングを抑え、安定した接続を維持できます。
ローミングの頻発は、無線LAN環境の設計と端末設定の両面から見直すことで改善が可能です。安定した接続を維持するためにも、電波の重なりや支援機能の活用を含めた総合的な対策を検討しましょう。
利用端末の増加による帯域の逼迫
近年、業務用PCやスマートフォンに加え、私用端末(BYOD)やタブレット、IoT機器などの登場により、
オフィスや施設内でWi-Fiに接続する端末数が急増しています。
多くの端末が社内ネットワークに接続されることで、1台の無線APにかかる負荷が想定以上に高まっているケースが多く見られます。
その結果、通信速度の低下・接続の不安定化・頻繁な切断といったトラブルが発生しやすくなっています。
対策ポイント:
① 無線APの性能と接続台数の見直し
現在使用している無線APの最大同時接続数や処理能力を確認し、推奨値を超えていないかをチェックします。
超過している場合は、より高性能な無線APへの入れ替えや増設を検討しましょう。
② サイトサーベイとチャネル設計の最適化
電波干渉やカバレッジの偏りを防ぐために、現状の電波状況を可視化(サイトサーベイ)し、チャネル設計や無線AP配置の最適化を行います。
③ ネットワーク分離と端末管理の強化
私用端末やゲスト用端末は、業務用ネットワークとは分離されたSSIDに接続させることで、セキュリティと帯域の確保が可能になります。
また、端末管理(NACやMDM)を導入し、社内で接続端末の制御や可視化を行うことも有効です。
接続端末の増加に伴う通信トラブルは、機器の性能だけでなく、設計・運用・管理の見直しによって改善できます。安定したWi-Fi環境を維持するためにも、端末数に応じた適切な対策を早めに講じましょう。
まとめ
無線LANの安定運用には、単なるトラブル対応だけでなく、設計段階からの見直しや継続的な検証・改善が欠かせません。今回ご紹介した8つの代表的なトラブルとその対策を参考に、現場ごとの課題を正しく把握し、的確な対応を講じることで、信頼性の高いWi-Fiネットワークの構築と維持が可能になります。
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