
メインフレームとは?オープン系システムとの違いや今後の動向もご紹介
こんにちは。プロフェッショナルサービス2部のM.Kです。
昨今、世界中の銀行の勘定システムや航空機の運行管理など、現代社会に欠かせない重要なシステムを支えているのが「メインフレーム」と呼ばれる大型コンピュータです。
弊社はメインフレームそのものを製造・提供しているわけではありませんが、ネットワークインフラの構築や維持管理において、金融機関をはじめとするお客様の業務に携わる中で、メインフレームとネットワーク機器間の接続要件に対応する機会が数多くあります。
特に、オープン系システムとは異なる通信方式や技術的特性を理解したうえで、メインフレーム接続を含むネットワークの設計・構築業務も弊社の重要な役割のひとつとなっています。
本記事では、そうした背景を踏まえ、メインフレームの基本的な仕組みや通信の特徴、主要メーカーの製品動向などについてご紹介します。
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目次[非表示]
メインフレームの特徴と役割
メインフレームとは、金融機関や公共機関、航空機運航システムなどの基幹情報システムに使用される大型コンピュータのことです。
別名「汎用機」や「ホストコンピュータ」とも呼ばれ、高い信頼性・耐久性・セキュリティ性能を備えています。
【メインフレームの主な特徴】
1. 高い信頼性:24時間365日稼働を前提とした設計で、システム停止が許されない環境に対応。
2. 高い耐久性:数十年単位で安定稼働できるよう設計。
3. 高いセキュリティ:特権IDの管理が厳格で、不正アクセスを防ぐ仕組みが標準搭載。
また、メインフレームは「並列処理」に強く、複数の処理を同時に実行しても処理性能が落ちにくい特性があります。さらに、CPUなどのリソースの使用率や負荷量を監視し、停止しないよう管理しています。
銀行の大規模な取引処理や、航空機の運行管理といった膨大なデータ処理を正確に、24時間365日稼働を止めずに行えるのはこの特徴のおかげです。

図.1 IBM製z16メインフレーム
オープン系システムとの違い
メインフレームは、非常に高い処理性能と信頼性、セキュリティにより銀行の勘定系システム(お金の計算・管理を行う業務)や航空会社のフライトシステムなど、特に信頼性が求められる重要な社会インフラの基幹システムに特化したコンピュータです。
一方、現在広く利用されているオープン系システム(分散システム)は、柔軟性や拡張性に優れており、必要な分だけ必要な量の性能を構築することができ、多様な用途で使われています。
両者の大きな違いは以下の通りです。
- メインフレーム:止まらないことを前提とした堅牢な設計、厳格なセキュリティ、並列処理に強い。
- オープン系システム:OSや機器を自由に選択、拡張性が高くクラウド連携や新技術への対応が容易。
つまり、メインフレームは「安全性と信頼性」を最優先するのに対し、オープン系は「柔軟性とコスト効率」を重視しているといえます。昨今はこのメインフレームを含むオンプレミス環境とオープン系の両者を組み合わせる「ハイブリッド運用」設計が浸透しており、双方の技術がますます重要になってきています。

表1.メインフレームとオープン系システムの特徴一覧
メインフレームの通信方式について
メインフレームは、開発ベンダー独自の通信規格を使用して通信を行います。
このため、インターネット標準通信規格(TCP/IP)とは直接疎通ができません。
※2025年現在、TCP/IPに対応している機種もあります。
以下はTCP/IPの通信をメインフレームに直接送ろうとした場合の、通信廃棄の図です。
図.2メインフレームは独自の通信プロトコルでのみ通信
そのため、以下のような工夫が必要となります。
ケース① NW機器のプロトコル変換機能を使用する方法
図.3 NW機器による通信プロトコル変換を用いた通信
かつてはシスコシステムズにより提供されていた「DLSw(データリンクスイッチ機能)」なども利用されましたが、現在は保守サービスが終了しており、設計に組み込むことは推奨されていません。
ケース②メインフレームの前に通信プロトコルを変換するためのサーバ「コミュニケーションサーバ」を設置し、ベンダー独自の通信プロトコルを標準規格の通信に変換して通信する方法
※図中のCISサーバ、CIS-LightサーバがIBM z/os機器のコミュニケーションサーバに当たります。
図.4 通信プロトコル変換サーバを経由した通信
コミュニケーションサーバ(CISやCIS-Light) を設置し、SNAとTCP/IPを相互変換します。
これによりオープン系システムやWebサービスとの連携が可能になります。
設計時には「通信の宛先がメインフレーム本体ではなく変換サーバになる」ことに注意が必要です。
このように、通信方式の違いを理解していないと「なぜ接続できないのか?」という落とし穴にはまりやすいのです。メインフレームとの接続設計に携わる際には、事前に通信要件をしっかり確認することが大切です。
国内メーカーの動向と今後
日本のメインフレーム市場は、長年にわたり複数のメーカーが支えてきました。日本国内にてメインフレームの供給を行っている代表的な4社について説明します。
IBM:世界的にメインフレームをリードしており、現在も製造・保守を継続。
最新モデル「z16」は、セキュリティや処理性能の面で高い評価を得ています。NEC:独自の「ACOSシリーズ」を展開し、安定した製造・保守を継続。
国内のお客様からも根強い支持があります。富士通:かつて国内シェア1位を誇りましたが、2030年度末で製造を終了し、
2034年をもって保守も終了予定と発表しています。- 日立:2017年にメインフレームの製造から撤退し、現在は自社OS(VOS)の提供を継続。
ハードウェアはIBM製を活用しています。
図.5 各社メインフレーム一覧
グラフ1.国内のメインフレーム出荷台数比較 (2021年)
出典:IDC Worldwide Quarterly Server Tracker, 2023Q2. Share by Company
特に国内シェア1位の富士通は、メインフレーム事業からの撤退を発表しており、メインフレーム市場に大きな変化をもたらしました。これにより、従来富士通製メインフレームをご利用されてきたお客様は、IBMやNECなど他社製品への移行、あるいは分散システムやクラウド環境への移行を検討する必要が出てきました。
この状況は、お客様企業にとっては将来のシステム刷新を考えるきっかけとなり、私たちITベンダーにとっても新しい技術支援の機会となります。単なる「撤退」というネガティブなニュースではなく、「次のステップをどう踏み出すか」を考える大切なタイミングと言えるでしょう。
まとめ
メインフレームは高信頼性・高セキュリティを備え、社会の基盤を守る存在として長年利用されてきました。一方で、メーカーの撤退や技術継承といった課題が迫っています。これからはオープン系システムとの共存や移行が進むことで、専門知識を持つ技術者の価値はますます高まっていくと予想されます。
弊社はこうした変化の中で、お客様が安心してシステムを利用できるよう、最適な技術提案と運用支援を行ってまいります。今後も最新情報を発信しながら、皆さまの課題解決に貢献していきます。
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引用元
https://www.ibm.com/jp-ja/topics/mainframe
https://arteceed.squares.net
https://www.hitachi.co.jp/products/it/finance/solutions/platform/environment/rehosting/index.html
https://www.fujitsu.com/jp/products/computing/servers/mainframe/gs21
https://jpn.nec.com/products/acosclub/index.html
グラフ1.データ出典:IDC Worldwide Quarterly Server Tracker, 2023Q2. Share by Company






