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ネットワーク設計を容易にするスタック機能について

こんにちは。クレスコ・デジタルテクノロジーズのK.Kです。
今回は、一部のネットワークスイッチ製品でサポートされているスタック機能を利用することによる、ネットワーク設計へのメリット、デメリットについてご紹介したいと思います。
本記事がこれからネットワークの設計に携わる方の技術力向上に貢献できると幸いです。


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目次[非表示]

  1. 1.スタック機能とは?
  2. 2.スタック機能使用によるメリット
  3. 3.メリット1:L2ループ防止対策の容易化
  4. 4.メリット2:ゲートウェイアドレスの冗長化設計の容易化
  5. 5.メリット3:利用するIPアドレスの削減
  6. 6.メリット4:ネットワーク回線帯域拡張の容易化
  7. 7.メリット5:機器障害時および回線障害時における通信断時間の削減
  8. 8.スタック機能に使用によるデメリット
    1. 8.1.デメリット1:スタック機能を利用するために、ネットワーク機器の導入コストが高くなる場合がある。
    2. 8.2.デメリット2:スタック機能を利用するためにスイッチ同士の物理的な制限がかかる場合がある。
    3. 8.3.デメリット3:スタック機能を利用しない場合に比べて、導入するネットワーク製品に制限がかかる場合がある。
    4. 8.4.デメリット4:スタック機能を利用する機器について、OSバージョンの制限がかかる場合がある。
  9. 9.まとめ
  10. 10.引用元

スタック機能とは?

スタック機能とは、複数の物理スイッチを論理的に1台のスイッチとして扱うことができる技術です。複数のスイッチを1台のスイッチとして扱うことで、ネットワークの設計や管理が格段にやり易くなります。スタック機能を利用することによる具体的なメリット、またデメリットの両方を見ていきましょう。


なお、本記事内では構成を分かり易くするために2台構成にしていますが、スタック構成を組むことが出来るスイッチの台数は、製品によって上限数が異なります。2台以上でスタックができる機器もありますので、予めご認識ください。




スタック機能使用によるメリット

スタック機能を使用することによるメリットは多岐にわたりますが、ここではより恩恵の多いものとして、以下の5つをご紹介します。 

  • メリット1:L2ループ防止の対策の容易化。
  • メリット2:ゲートウェイアドレス冗長化設計の容易化
  • メリット3:利用するIPアドレスの削減
  • メリット4:ネットワーク回線帯域拡張の容易化
  • メリット5:機器障害時および回線障害時における通信断時間の削減

 これより、上記に挙げた5つのメリットについての詳細を見ていきましょう!!



メリット1:L2ループ防止対策の容易化

ネットワークセグメントの拡張性を備えたネットワークを設計するための考慮事項として、L2ループ対策があります。

 
ネットワーク設計においてL2経路冗長化を設計する際に、幅広く利用されているのがスパニングツリープロトコル(STP)ですが、ネットワークの規模が大きくなればなるほど、各スイッチのSTP設計の負荷とSTPトポロジーの影響範囲が拡大するため、しっかり設計しないとネットワーク障害時のトラブル要素となりうることが多いプロトコルとなります。


スタック機能を利用して、複数のスイッチを1台のスイッチとして扱うことで、STPに代わってリンクアグリゲーション(LAG)でのL2経路冗長化が可能となります。これにより、STPのブロッキングポートの設計や障害時の影響範囲の考慮をしなくて済むため、経路冗長設計が格段にやり易くなります。


以下に、STPでのL2経路冗長化と、スタック機能+LAGでのL2経路冗長化のイメージを掲載します。




メリット2:ゲートウェイアドレスの冗長化設計の容易化

ネットワーク経路の冗長化を考える上で、通信する端末に設定するゲートウェイアドレスの冗長化は必須となります。
 
一般的には、VRRPやHSRPといったゲートウェイ冗長化プロトコルを利用して、ゲートウェイアドレスを冗長化する設計がありますが、スタック機能を利用することで、これらのFHRP機能を利用することなく、ゲートウェイアドレスを複数のスイッチで共有することができ、ゲートウェイアドレスを容易に冗長化することができます。
 
以下に、VRRPを利用した場合とスタック機能を利用した場合での、ゲートウェイアドレスの冗長化のイメージを掲載します。




メリット3:利用するIPアドレスの削減

通信設計において、各デバイスが通信するために、IPアドレスセグメントの設計とIPアドレスの装置への割り当ては必須ですが、VRRPやHSRPなどのゲートウェイ冗長化プロトコルに代わってスタック機能を利用することで、各ネットワークセグメントで利用するIPアドレスが削減でき、IPアドレスの管理負荷を軽減することができます。
 
例えば、VRRPを利用してL3スイッチ2台を冗長化した場合、各スイッチの物理IPアドレス2個と2台のスイッチで共有する仮想IPアドレス1個の計3個のIPアドレスを利用しますが、スタック機能を用いた場合は2台のスイッチでIPアドレスを共有することができ、各セグメントで必要なIPアドレスは最低1個あれば良いことになります。
 
利用するネットワークセグメントが多くなればなるほど、アドレスの削減効果は大きくなるため、IPアドレスの管理負荷の削減が期待できます。
 
以下に、スタック機能によるIPアドレス管理負荷の削減イメージを掲載します。




メリット4:ネットワーク回線帯域拡張の容易化

メリット1で、L2ループ対策として、スタック機能とLAG機能を用いた方法をご紹介しましたが、L3スイッチでスタック機能を使用して、配下L2スイッチとの接続でLAGを使用することで、ボトルネックになりやすいL3スイッチ~L2スイッチ間のネットワーク回線帯域をLAGのアサインポートの増減によりコントロールすることが出来るようになり、回線帯域の拡張が容易になります。
 
以下にスタック機能+LAG構成での回線帯域拡張についてのイメージを掲載します。




メリット5:機器障害時および回線障害時における通信断時間の削減

メリット1とメリット2で挙げたSTP、ゲートウェイ冗長化プロトコル不使用の副産物として、機器障害時の通信断時間を大幅に削減出来ることがあげられます。
 
幅広く利用されているSTP+VRRPでの冗長化は、各プロトコルでの経路切り替え時間のうち長いほうが、経路切り替えが完了する時間となりますが、スタック機能+LAGの構成では、リンク断または装置の電源断を検知して、スタックを組んでいる他メンバースイッチ向けに通信経路を切り替えることが出来るため、機器障害時および回線障害時における通信断時間を大幅に削減することが出来ます。
 
以下に、STP+VRRPでの通信断時間とスタック機能+LAG構成での通信断時間のイメージを掲載します。




スタック機能に使用によるデメリット

ここまでは、スタック機能を利用することによるメリットについてご紹介しましたが、スタック機能を利用することで生じるデメリットについても見ていきましょう。


デメリット1:スタック機能を利用するために、ネットワーク機器の導入コストが高くなる場合がある。

ネットワークスイッチでスタック機能を利用しようとすると、専用のライセンスが必要な場合や、スタックをするための専用のスタックケーブルまたは、光トランシーバー、光ケーブルなどのスタック用部材を追加で購入する必要が生じる場合があり、スタック機能を利用しない場合に比べて、機器の導入コストが高くなる場合があります。  


デメリット2:スタック機能を利用するためにスイッチ同士の物理的な制限がかかる場合がある。

スタックするための前提条件は、使用するネットワーク機器メーカーにより様々ですが、一般的には、専用のスタックケーブルや、スタック専用ポートの割り当てが必要になります。
 
専用のスタックケーブルを利用する必要がある場合は、スタックケーブルの長さによっては、物理的に離れた距離にあるネットワーク機器と接続出来ない可能性があります。
また、スタック用に専用ポートを割り当てる必要がある場合は、通信に利用するためのポートの数が減ってしまいます。
 
機器によっては、10Gbps以上の高速通信用の光ポートをスタック専用ポートとして割り当てている製品もあるので注意が必要です。この場合には高速通信のための、専用の光トランシーバーと光ケーブルの準備が必要となります。 


デメリット3:スタック機能を利用しない場合に比べて、導入するネットワーク製品に制限がかかる場合がある。

スタック機能は、複数の機器を1台として扱うという機能の特性上、スタックを行う機器についてのモデル制限(同一機種でかつ、同一ポートのモデルのみでスタックが可能等)がある場合が多く、状況に応じた柔軟な製品モデル選定が出来なくなる場合があります。
 
 (例:L3スイッチの48ポートモデル2台、24ポートモデル2台、16ポートモデル*2台(スタック機能不使用の場合の機器選定)

⇒L3スイッチの48ポートモデル*6台(スタック機能利用の場合の機器選定。※同ポートモデルでのスタック利用制限ありのため同一モデルで選択)


デメリット4:スタック機能を利用する機器について、OSバージョンの制限がかかる場合がある。

スタックを行う機器同士でのOSバージョンにおいても制限がかかる場合があります。
 
詳細は各製品の仕様によって異なりますが、同じOSモデルでかつ、同じOSバージョンがスタック機能の前提条件になっているケースが多く、導入時期が異なる機器とスタック構成を組むためには、OSのバージョンアップ作業や、同じOSモデルへの機種交換などの対応をしないとスタック機能が利用できないケースもあるため、スタック機能に関連するソフトウェア条件についても十分な確認が必要となります。
 
例1:OSモデルが異なるため、スタック機能が利用できないケース (OSモデルの不一致)
スイッチ1:OS-L3ライトモデル(OSPF/BGP等 未対応OS)
スイッチ2:OS-L3アドバンストモデル(OSPF/BGP等 対応OS)
 
例2:OS-バージョンが異なるため、スタック機能が利用できないケース (OSバージョンの不一致)
スイッチ1:OS-L3アドバンストモデル OS Ver:8.3
スイッチ2:OS-L3アドバンストモデル OS Ver:8.4


まとめ

今回、スタック機能のメリット、デメリットについてご紹介させていただきましたが、いかがでしたしょうか。
昨今では、ネットワーク製品自体の機能向上及び最新のプロトコル技術によって、今回ご紹介したスタック機能をより発展させた、仮想化技術を用いた冗長化機能も少なくありません。
エンジニアに求められるスキルの一つとして、数多くの技術の中からその時々で、システム要件に合致した最適な技術を選択し、より使いやすいシステムを構成できることがあると思います。
本記事をご覧いただいた皆様が、より柔軟なネットワーク構築のための技術知識を習得するための一端を担えると大変嬉しく思います。


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引用元

K.K
K.K
部署名:プロフェッショナルサービス2部

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